コンクールは使いこなさなきゃ!

毎年夏には、大きな声楽コンクールがいくつもあります。

コンクールでは(特定の作曲家や特定のレパートリーに絞ったコンクール以外は)、一部の課題曲をクリアしつつ、膨大な数の曲から自分で応募曲を選び、果敢に挑戦することになります。コンクールによっては、複数の言語による曲を歌うことも義務づけられます。

数多くの有名な演奏家たちが、審査員に並ぶコンクール。

でも、コンクールに自分の演奏家としての人生を預けるのはちょっと待って!

 

 

審査員の主観で決まるコンクール

声楽のコンクールの審査には、フィギュアスケートや体操の選手権のような明確な審査基準はありません。(最高点と最低点を除いた点数の合計、という方法は多くのコンクールで採られています。)審査員はあくまで、それぞれの主観で点数をつけます。

審査員は、今はまだあちこちに未熟な点はあっても将来性に期待してそこに加点する人もあれば、あくまでその時の演奏の仕上がり、完成度で判断する減点法で採点する人もあり、その審査方法は実に様々なのです。

 

 

コンクールの結果に人生を預けない

「優勝した賞金を元手に留学するぞ!」といった目的がない限り、コンクールは、勝ったからといって、また振るい落とされたからといって、あなたのすべてが認められたわけでも、また全否定されたわけでもないのです。

コンクールは、あくまでその数分間の演奏に対する評価でしかありません。

実は危ないのは、勝ったとき。その日に美酒に酔うのは大変結構。頑張った自分を褒めてあげましょう。ですが数日して冷静になったときに、これはあくまで他の出場者との相対的な比較の結果であることを思い出してください。

あるいは、思わぬ結果に終わったときには、落とされたことに腐ってはいけません。入賞した人たちほど自分の演奏に魅力がなかったことは真摯に認めなければならないけれど、「レパートリーを全部変えよう」「歌い方を変えよう」と安易に飛びついてはいけません。コンクールが終わったらまず、自分の演奏のどこに至らない点があったのか、冷静に分析することです。そして、そこを補うのには何をすればいいのかを考え、実行しましょう。

 

 

参加費の分、コンクールを利用しよう

東海地方で行われる大きなコンクールには、エントリーも滞在費も無料というところもありますが、ほとんどの場合は、出場するためには数万円の参加費を支払い、伴奏者にギャラを払い、離れた土地で開催されるコンクールに出場するためには、そこまでの旅費も支払っているはずです。

これからは、コンクールに対する思考方法を逆転させましょう。

これは昔、大先輩に教えてもらったことで、なるほど!と目から鱗が落ちたのですが、こちらがお金を支払っているのですから、「自分が今、課題としていること、勉強していることを専門家の審査員と、熱心な声楽ファンのお客様が聴いてくれている舞台の上で、試してみる」ことにコンクールを使って構わないのです。相手にどう評価されるか、よく思われるかに気を揉んで、萎縮してしまっては、高い参加料を払う意味がないのです。

狭い練習室では上手く出来ているつもりだけれど、舞台に乗って歌ってみると「自分にこの歌は合わない」と感じることもありますし、その逆に、新たなレパートリーに挑戦してみたら、それが思いがけなく歌いやすく、のびのび表現ができた、ということもあるでしょう。

コンクールに勝つというのは、いろいろな要素が重なり合ってできること。声の技術、音楽性、その時の歌唱の完成度。勝ったからといって順風満帆のキャリアが手を広げてあなたを待っているわけではありません。優勝者としてキャスティングされるコンサートやオペラで一定の成績を残さなければ、コンクールの結果はすぐに忘れ去られていきます。

負けたとしても、今の自分の実力、できること、できないことが自分ではっきりわかれば、あなたは次のステップに進むことができるのです。

 

 

大曲、難曲と高得点とは関係がない

それともうひとつ、なぜか大きな曲、難しい曲を歌った方が高い点がつくと思われがちですが、それが身の程知らずの選曲、と思われてマイナスに働くことも多々あります。審査員は百戦錬磨の歌手や専門家。歌い出した30秒で、その出場者の大体の実力は見抜いています。大曲だから、難しい曲だからと加点されることはまずありません。

オペラアリアであれば、その曲の歌われるシーンが浮かび上がるような役柄への理解ができているか、きれいなセリフ回し、好き勝手な歌い回しではなく、それぞれの作曲家のスタイルに合っているか、といったことが加点要素となります。

歌曲であれば、音楽性、言葉のあしらい。なによりその歌手がその歌をどう解釈し、それを表現にむすびつけることができているか。

「いい声でしょう!」と声楽コンクールで声の良さを誇っても何にもなりません。プロを目指して声楽の勉強をしている人は、みんないい声の持ち主なのです。それはベースでしかありません。

コンクールで競われるのは、その先。

聴衆を感動させる歌手になれそうな才能の持ち主を審査員は選ぶのです。

コンクールの使い方、ちょっと見直してみませんか?

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